2012.01.22
診察室に患者様のキャリーバッグ置場(テーブル)を導入いたしました。使いやすければそんなにこだわるものかしら? と多くの方は思うでしょう。しかし私の性格上、なんと、このキャリー置場を探すのに2年もかかってしまいました。探しまわったキャリーの条件下記の5項目。
①美しく清潔なデザイン
②壊れにくい
③キャリー置場や患者様のお荷物置場としてもイスとしても利用できる
④動かしやすい
⑤当院の狭い診察室に圧迫感を与えない。
これが難しいんです。yahooから、楽天、オークション、ebay、海外サイトを何万点見たことでしょう。BALS、CIBONE、はてはB&Bまで歩き回りました。本当にないんです。とにかく探して探して、いつのまにやら2年。そうして出会えたのが、HAY METRO STOOLでした。私が購入を決めた2011年5月にはミッドタウンにしか輸入代理店がなく(現在も)、受注生産で7ヶ月待ちを言い渡されました。現在は、デンマークのサイトから直輸入出来るようです。このHAYという会社の主力製品はヤマギワなどに卸しているようですが、このMETRO STOOLは需要が少なすぎるんじゃないでしょうか。たしかに私も家には置きたくないですもの。誰が何を目的にして買うんだ? と考えれば、売れない。そう。売れないでしょうねえ〜。7ヶ月で私しか購入してないそうですし。。。
このテーブルを上から見るとなんだかわかりますか? デンマークの地下鉄路線なんだそうです。まったく関係ないもの同士を結びつけて、機能ありきで、そこに美しさに付加していること。この発想がすごいです。世の中のものは、機能を追求して無駄を省いて美しいデザインに行き着いたもの。もう一つは美しいデザインありきで後から機能をつけたものがあります。10年たって考えればわかることですが、後者は名品として歴史には残らないものがほとんどです。消費されるデザインにカリスマ性はありません。現在、日本の家電をはじめとした製品は後者に侵されつつあります。嗜好性が良くパッと見はかっこいいデザイン。しかし本当は??。一歩引いて見る目利きになりたいものです。...
...
2011.09.07
ワタリウム美術館の草間彌生展に行って参りました。今回は60年代の彌生の世界を中心に展示してあるようで、今まで草間彌生に印象づけられていた「水玉」とはまた少し違ったイメージを持つことができました。彼女のルーツを探る展示とでもいうのでしょうか。一言で表現すればトラウマから生じたひとつの悟りみたいなものが彼女の世界をつくりあげているのでしょう。ワタリウムのコンクリートの壁に直接赤い文字で記された詩。どこからみてもかっこよく緩いところがありません。普段、私は美術館にいってもあまり絵画の説明などよまないほうなのですが、今回は違いました。彼女の文章にはオーラがあるんです。エネルギーの強さ、見た者を虜にして、一気に読ませてしまうような迫力のある文章表現。草間彌生の文才。そんな魅力にも気づかされる展示でした。
「私がアメリカに渡ったのは、1957年の11月18日のことだった。私たちの世代は戦争の影響で、学校で英語をおしえてくれなかったけど、外国へ行く不安なんか全然なかった。とにかく、古いしがらみから逃れたくて、日本を出たくて出たくて仕方がなかったのだから。」
無限の絆 草間彌生自伝から
病院という場所で使用するには、彼女の作品は非常に色合いが強すぎて使用しにくい感があるのですが、歯科手術のあとのご家族説明用書類を入れておくクリアファイル。それと待合用のカードを一枚購入しました。...
POST SCRIPT
ワタリウム美術館のサンドイッチはおいしい! まるで春樹の小説に出てくるかのような清潔な味がします。そして、地上から吹き抜け2階まである高い高い本棚。そして魅惑的な書籍の数々。魔法の館。ハリーポッターの世界。図書館に住む老人。いろんな妄想がうかびあがります。ミッドセンチュリーな感じが素敵。関係ないけど、ワタリウム美術館で一番よかったのは、ドアノブ。これはすごい。こんなすごいドアノブ見たことない。使いにくいでしょうが。いいんです。美術館なんだから。
2011.08.06
セルジュグンスブール。こちらが当院の待合に飾ってあります。CDジャケット、ライター、待合のBGMなど、ほとんどが彼に関係した作品であることがわかります。年に2度か3度。その事についてお声をかけていただくことがございます。心よりうれしく思います。本日はイタリア人の患者様にそのことについてコメントをいただき、うれしさのあまり筆をとった次第であります。その方はジェーンバーキンとゲンスブールの写真を着信の待ち受け画面にしていらっしゃる。映画を見に行った。曲、ファッション、生き方などについて、種々のコメントをいただきました。ゲンスブールはニーチェの言葉を借りれば「万人のための書だが、誰のためのものでもない書」。いや、「万人のための音だが、誰のためのものでもない音」。まさに日本ではこんなイメージではないでしょうか。つねに新しいものと古いものを見つめ、進化することをとめないという姿勢。完全に完成された対象に関しては、それをストイックに守る姿勢。たとえば、彼でいえばレペットの靴ではないでしょうか。そういった姿勢。生き方すべてがわたしのプライベートや医療に対する姿の見本になっております。ストイックな姿勢を保つために、見えない努力をし続け、それがまるで努力をしてないかのようにスマートにこなすこと。これほど難しいことはないのかもしれません。
2011.06.30
診察室のノート。さてこれはいったいなんの絵柄かな? と思われた方もいらっしゃることでしょう。これは、六本木ヒルズにて2010に開催された「医学と芸術展」にて購入したものです。当初開催の際、店員の方から、「在庫もなく今のところほしいヒトもいない」と言われ手に入れられなかったのです。岡本太郎氏ではありませんが、「はっ」と気づかせてくれるような、時には嫌悪感であったり、好感であったり。なんにせよ、目をみはるものがあるっていうのは良くも悪くも素敵なものだと思うのです。私はノートほしいがために2回足を運び、いっぺんに10冊買って参りました。この絵柄は、かの有名なファーブルが作った模型です。ファーブルといえば「昆虫記」だと思いますが、下記のような記載があります。
ヤン・ファーブルの活動は幅広く、アーティストである以外に、劇作家であり、ステージ・ディレクターであり、振付け師でもある。祖父は『昆虫記』で有名な、アンリ・ファーブルであり、その祖父の遺功をたたえるかのように、彼は大量の黄金中を使った作品を制作することでも知られている。
この作品は、脳をあたかも動物のように乗りこなそうとしている自分自身の像である。脳科学が発達した今日、脳が見る現実、夢、認知のメカニズム、そして時には狂い、暴走する脳を、ユーモラスに、また皮肉を込めて描いている。
とくにファーブルに思い入れがあるわけでもなんでもないのですが、この模型の構図といい、色合いといい、とにかく発想がよい。もうこのノートは手に入れられません。30冊くらい買っておけば良かったとちょっと後悔。...
2011.06.15 開 業 8 周 年
聴診器をリニューアルしました。医療の話はここではおいておいて、まずは画像をご覧ください。この聴診器のなんとも美しいこと!。普通、聴診器は黒、赤、青。そんなイメージでしょう。これ。まさに、海賊船の宝箱から発見されたような美しさ。見た目がよければ、自らの聴診技術が向上したかのような錯覚までおぼえます。もちろん、聴診器としてもいろいろ使用した結果、小動物にはどんなに高価なモデルよりも、この聴診器が聞きやすいと選んだモデルでもあります。自己満足ではありますが、当分はこれにかなう外観のモデルはみつからない事でしょう。...
POST SCRIPT
本日で8年目になりました。当院では来院ノートをつけております。話題のひとつとしてこのノートをスタッフに見せたりします。最初の1週間で来院2件。その後の7日間。来院ゼロ。6/15~6/30の15日間で売り上げは15万でした。平均すれば1日の売り上げ1万です。買わない、遊ばない、住まいを借りない、極力食べない。ほんの1畳で1年間生きてみる。常識的な最低限の生活というハードルをさらにこえた生活をしてみる。その泥臭い努力を尊いとみるヒトもいるでしょう。しかし視点をかえれば、それは若いからこそできる魅惑的なひとつの冒険でもあります。自ら選択した場合。それは根性物ではなく、冒険なのです。たいていの事では腹をたてず、たいていのことでは音をあげず、そして、どんなことにでも幸せを見いだせるようになります。謙虚さをうしなわず、いつでも自らが半人前であると考えること。それは医療の発展につながるのかもしれませんね。
2011.05.29 歯科用手術台
動物で歯科をする際の手術台というものはありません。需要が少ないということは業者もつくらない。作ったとしても売れないでしょうから、自分で製作するしかありません。海外サイトなどでも探してみたのですが、海外では、お盆(トレー)に上に格子状のネットをはりつけ、それを頭の下にしいて手術しているようです。そもそもこのような方式で行うのは歯科の手術の際には大量の水を使用し、ペットがずぶぬれになってしまうからです。超音波で洗浄した際には、その水が、格子をすりぬけ下のお盆に入るという仕組みです。海外製品は大きく、非常に高さ(厚み)もあります。当院で日々行っている小型犬の手術で使用したら、おそらく45度くらいに体が傾いてしまうことでしょう。また動物歯科用具には、頭から帽子のようにかぶせて顔をぬらさないようにする頭巾(?)などもありますが効果は微妙でした。
アクリル板に穴をあけ、その部位にパンチングメタルを引っかけるという形で作成してみました。
①穴は大きいほど水は下に落ちやすく顔はぬれにくいが、強度の問題があるため、2枚重ねとする
②穴が大きければ小型犬では穴に足を引っかけ怪我をする可能性があるため、穴は最小限とする
③ネジの頭を平坦化することで、怪我を防止する。
④さびない
⑤溜まった水が簡単に捨てられる。
⑥他の処置を行っても耐えられる強度である。
⑦ステンレス格子が使用中は動かず、使用後は簡易的に洗えるような構造であること。
以上を踏まえて作成してみました。無影灯をあてて写真を撮影しますと、未来世界のようでなかなかテクノな感じです。この器具を使用し始めてから、顔の濡れも約半分。無意味なペットシーツの交換、手術室の汚染もなくなり、大変良好な状態です。
..
..
..
2011.05.22 はじまり
「備忘録」とは、忘れた時の用意に必要な事柄を書き留めておく帳面を示します。病院に盛り込むアイディア、提案。記録。これを忘れずに記録しておくためにこのページをつくりました。
このページのTOP画像は、今はなき、南麻布の「フランス大使館」です。旧庁舎を取り壊す前に「no man's land」が開催されました。これは日仏70人のアーティスト達が建築物自体に種々のペインティングやアートを施し、大使館自身をひとつのアート作品と考えるというイベントでした。庁舎自体はアートを施さなくても洗練された建築物でありましたが、この完成された「日常」に「表現」をプラスすることで、ヒトにさらなる感動や楽しさを与えてくれました。例えば同じ診断、同じ診療であっても、何か別の表現方法やアイディアによって理解が深まったり、ご家族によっては、まったく別の診断と感じることがあるかもしれません。
「 常に開拓する精神をもつ 」
それは、no man's land同様、病院を育て発展していくことにつながると考えております。このような経緯から、こちらの画像をページのTOP画面としてみました。不定期更新ではございますが、病院の歴史となるようなページを書ければと想っております。