炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー に よ る 腫 瘍 蒸 散 術
「蒸散」という言葉はなじみがうすく、電気メスとレーザーはしばしば混同されがちです。たとえば、机の上にある「メロンパン」を想像してください。これが腫瘍であると考えた場合、このメロンパンを取り除くには、パンの土台部分と机の間にメスをいれて切除するか、食べてしまうかのいずれかであると考えられます。メスによる切除や電気メスによる切除は前者にあたり、レーザー手術とは後者にあたります。つまり、レーザーは照射するたびにメロンパンをむしって食べたように腫瘍が「気化」して消えていきます。しかしながら実際には、簡単な事ではありません。もう一度、メロンパンの例に戻って考えてみましょう。メロンパンは机のうえにボンドで接着されているだけならばよいのですが、実際には机にめり込んでいます。つまり底辺はフラットではないと考えなくてはなりません。そうした場合、前述のように、パンと土台の間にメスをいれていくだけではめり込んでいる部分をとることはできず、机に埋まっている部分を取り残してしまいます。ここで、深さ(垂直マージン)を考えて腫瘍は切除するわけです。炭酸ガスの手術で難しい事はこの垂直マージンです。手術中に机にどれだけ侵入しているかを見極めることは困難であり、再発のリスクがどうしても伴うという事になります。そのデメリットを差し引いても、「必ず良性」、「麻酔をかけないで切除したい」というご希望をかなえるためには、とても良い選択肢であると考えます。


 続いて、全身麻酔をおこなって悪性腫瘍を切除する場合です。悪性腫瘍(癌)を切除する際には、腫瘍の辺縁部から数cmのマージンを考えて切除します。こういった切除方法を用いるのは、中心部にある腫瘍だけが腫瘍であるというヒトの先入観であり、実際には、周辺にも癌細胞はとびちっているとの理由からです。ここでたとえば、癌の中心部から3cmのマージンをとって6cm皮膚を切除したとしましょう。当然ながら、垂直(深さ)も切除しなければなりません。こういった場合、通常のメスや電気メスで筋層をはくり切除すると多大な出血および術後の疼痛が生じます。出血は手術による癌細胞の拡散につながることもあります。そういった場合、炭酸ガスレーザーであれば筋層を1枚蒸散することは簡単かつほとんど出血なく行うことができます。そんなことからも炭酸ガスは悪性腫瘍の除去にも有用といえます。



例1 顎の下にできた腫瘍の蒸散

このくらいの大きさの腫瘍ですと局所麻酔のみで腫瘍をとることができます。もちろん縫合することもなくお薬をのむだけで回復します。またこういった葉っぱ葉の形状の場合には、再発のリスクはほぼゼロに等しいと言えます。

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例2 眼瞼にできた良性腫瘍

眼瞼は炭酸ガスがもっとも有用な場所のひとつです。通常のメスや電気メスでこのような腫瘍を切除する場合、目頭をくさび形に切開してその後に縫合します。そのため、どうしても目頭が「屋根の形状」になり目つきが変わってしまいます。そのような際に炭酸ガスレーザーですと腫瘍のみの蒸散が可能です。このような部位で他にあげられるのが「耳」です。耳の場合もくさび形に切除を行い、縫合しなおすとどうしても耳に変形をきたしますのが、炭酸ガスであれば最小限に抑制できます。ただし目頭、あるいは耳。この2つ部位に関しましては、レーザーを用いた場合、再発が多いことも事実です。というのは目の変形を極力小さくするために、あるいは耳の外観を損ねないために蒸散を低めに抑制してしまうからです。耳に関しましては局所麻酔で対応可能ですが、レーザーは目に当ててしまっては大変ですので目頭に関してはどうしても全身麻酔が必要となってまいります。

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