ブリッジとは、「健常な歯と歯の間に義歯をつるす」という意味です。通常のしばしば使用されるのが、切歯あるいは下顎の切歯および犬歯になります。ブリッジはペットの場合には、取り外しができるようにしてしまえば、それを飲み込んでしまったときに誤飲/異物となり問題になるため、完全に固定してしまいます。またブリッジがより長く保てるようにするには、ブリッジの左右の健常歯の健康を保つ必要性があります。また、小型犬では、すでに切歯(前歯)に動揺が生じている場合が多いために、ブリッジを行ったとしても、数年後には支台となる部分が揺れることが多く、特に気を遣ったケアが必要となります。逆に下顎の場合には、犬歯をブリッジの支台とできるためにかなり強固なブリッジが期待できます。上顎では、切歯と犬歯の間にすきまがあり、かみ合わせた際に下顎の犬歯が侵入してくるために、犬歯を支台としてしまうと切歯と犬歯の間にワイヤーが露出し強度が減少し現実的ではありません。
● スタンダード ブリッジ
切歯が一本抜けており、残っている歯も自然脱落がおこりえるほどグラグラの状態です。
A:健常 B:動揺 C:脱落 D:動揺
E:健常 F:健常
ブリッジに耐えられる歯を3本残し残りの2本を抜歯します。
まずこの状態で印象模型を作成し、元の歯の形を保存します。
ブリッジの支台を形成します。正常の歯を掘削します。この状態で再度印象模型を作成し、ブリッヂの形成を試みます。その後、下顎とのかみ合わせをみます。
A:ブリッジ用に支台を構築
B:抜歯 C:抜歯(もともとの脱落歯) D:抜歯
E:ブリッジ用に支台を構築
F:健常歯
印象模型をもとに作成した石膏標本ならびにブリッジです。
作成したブリッジを設置します。本来の歯のコピーを並べた形ではありますが、非常に審美性にすぐれたブリッジになります。
支台の上に連結した5本のブリッジを設置接着して終了します。
● メ リ ー ラ ン ド ブ リ ッ ジ切歯が2本抜けてしまった例です。
上下の歯の印象作成から石膏模型を作成しはめ込んでみます。
材質はエステニアになります。
裏面側です。費用の関係上、ブリッヂ部分はパラジウムにて作成します。
設置します。
● 下 顎 ジ ル コ ニ ウ ム ブ リ ッ ジ( セ ラ ミ ッ ク )下顎切歯が3本(3本はすでに脱落)しか残存しておりません。下顎の場合には、犬歯と切歯の間に空間がないこと、犬歯が非常に強固であることから犬歯をアンカーにブリッジが作成できます。
動揺のある切歯3本を抜歯し、さらにアンカーとなる犬歯の外側を掘削し、ブリッジが形成できる形に造形します。
上顎および下顎の精巧な印象採取から石膏模型を作成し、上顎と下顎を噛み合わせていきます。
作成したオールセラミックの下顎です。このように力がかかる場所においては金属もしくはセラミック(ジルコニウム)が推奨されます。その他のエステニアやメタルボンドにおいては治療後早期の破折が予想されます。
上顎模型と再度噛み合わせ最終チェックをします。
設置後の写真
● 簡 易 的 ブ リ ッ ジ の 変 法
上記のようなメリーランドブリッジやセラミックによるブリッジは美容上すぐれるものの、コストが高額になってしまうというデメリットがあります。またこういう審美的な手術自体がペットにとってどうなのか? ということも問題にあがりやすいと思います。もちろんこういった手術を私から推奨することはなく、あくまでご家族の方からの意志があってはじめて行う手術であると考えております。ご家族自身の失態でペットの歯を失ってしまった。放置していたためにいつの間に抜けてしまった。ぶつけて折れてしまったなど、いろいろな方がいらっしゃいます。基本は「ペットにとって苦痛がないこと」「この手術によるマイナス点がないこと」。この2つが守られていることが重要なのではないかと思います。
ブリッジという言葉を使用すると混乱されるかたもいらっしゃることでしょう。ブリッジではなく、抜けた歯を簡単に「入れ歯」「差し歯」「インプラント」で治すというイメージで問題ございません。①割と安価であること ②それなりの強度であること ③どんな場合においてもワンちゃんにとって安全であること ④審美的にもすぐれていること。この①〜④をみたす方法として、当院では、ヒトの医療を応用し安価に歯を修復できないものかと考えておりました。どうしてもこういった治療については成書(教科書)での記載がないために、当院のオリジナルにはなってしまいますが、この方法にて、おおよそ①〜④をみたすブリッジの方法を考案し施術可能となりました。
下顎の切歯が一本抜け落ちております。
ブリッジを作成し固定します。
施術3ヶ月後の写真です。動揺、炎症ともにありません。
前述のメリーランドやセラミックと異なる点。
①日帰りで手術が行えます。
②一度の麻酔で完了します。